酒とポテチと僕

アニメ、ゲーム、小説、音楽などの感想を綴るブログ

小説 人魚の眠る家 感想

f:id:sakepotech:20191015222008p:plain


読み終わって数週間経ってしまったのですが、東野圭吾さんの小説、人魚の眠る家について感想を書きたいと思います。映画化もされていて、映画の評判は微妙っぽいみたいですが、小説の方はすごい良かったです。人の死とはどう定義されるのかという深い問いについて切り込んでいて、結構衝撃的な内容でしたね。以下、ネタバレありです。

 

結構狂気的な内容

溺れて脳の機能がほぼ死んでしまった娘の瑞穂を、母親の薫子が最先端の技術で生きてるように扱い続けるというかなりキツい内容で、冷静に読むとかなり狂気的な内容です。

脳死となった瑞穂に対して、電気信号で横隔膜を動かすことで呼吸させるところから始まり、最終的には電気信号で体を動かすところまで行ってしまうのは、瑞穂の死を認めることのできない母親の愛のような狂気からきているように感じました。ただ、体は生きていて脳は死んでいるだろうという状態で、自分の子供の死を受け入れることができない気持ちはわかりますし、体が動いたと感じたのであれば尚更生きていると信じたくなるとも思います。

途中、今の瑞穂を殺すことが殺人になるかどうか問うことで、瑞穂は生きているのだと証明しようとするシーンは狂気がマックスに至った感じがしました。結局は、姪の若葉の瑞穂に対する真っ直ぐな言葉により、自分のしていることを他者に理解してもらう必要はないのだと納得して、話が落ち着いて良かったです。

ラストは、解釈が間違っているかもですが、娘が母親の夢に出てくることで、母親が娘の死を受け入れることができ、脳死を選択することができたという終わり方でした。人間にとって愛する人の死を受け入れることはとても難しいことで、この作品は死を受け入れるまでの過程を描いた作品でもあったと思います。心優しい瑞穂なら臓器移植を選ぶだろうという流れでしたが、脳死判定判定を選ばない選択に至ってしまい、ただ最終的には臓器移植されたので、瑞穂の意思がその通りになって良かったと思いますし、移植先の子供が最初に出てきた少年だったのもなんだかほっこりする感じがして、さすが東野圭吾さんはうまくまとめるなあって思いましたね。

 

脳死判定の決断について

脳死判定には複雑な法律の話が絡んでくるわけで、脳死の判定が複雑な日本だからこそ書けた作品でしょう。

日本での脳死の決め方は、脳死と疑われる状態になった時、脳死判定をして初めて脳死と確定されます。そして、脳死判定をするかどうかは遺族に委ねられ、判定をしなければ法律的には死んでいるとはみなされないことになります。つまり、実質的に生死の判断が遺族に委ねられており、遺族が判断に苦しむことになるわけですね。このような日本の法律の現状について、疑問を投げかけるような内容でもあったのかなとも思いますね。脳は機能していないけど体は生きている状態を死と判定することに対する拒否感が日本社会のどこかにまだあって、そのような感覚が法律に表れてしまっている感じがします。

遺族が苦しまないためにも、脳死に対して、臓器移植に対して意思表示をしておくのが大切だなと身にしみました。

 

生きていることの定義とは

また、命とは何か、生きている状態とはどう定義されるのかを考えさせられる内容でもありました。体は生きていて成長もしていても脳が死んでしまっていて、そんな状態の人間でも冷静に考えれば死んでいるわけですが、死んでいると断定するのもなんか違うような気がして、生命の定義の難しさを感じました。

ここから話が大きく脱線していきますが、将来的に脳機能の全てが解明されたら、脳死になっても、自分の記憶をあらかじめ植え付けた人工脳を移植することで生き続けられるんだろうかとか、逆に言うと、人の体に脳を移植すれば、永遠と生き続けられるんだろうかとか、そんなことも連想したりしてましたね。彼方のアストラでは、クローンに自分の記憶だか脳だかを移植して、生きながらえ続けるみたいな話がありましたが、そんなような未来がきたりするんですかね。もっと脱線すると、シュタゲの続編でAIとして亡くなった人を復元するみたいな話もありましたし、あなたの番ですも亡くなった人をAIとして作り出す話がありました。SAOの劇場版も亡くなった娘をAIとして復元する話だった気がします。

このように、生に限界があるということは科学技術で克服されるかもしれないなんて考えたりもしますが、やはりそこは扱ってはいけない領域なような気がします。人間は神じゃないし、生死を操れるようにはならないし、なってはいけないような気がしていて、いくら科学が進歩してもそこは踏み込んではいけない領域で、そこに手を出すと大きなしっぺ返しを食らうようなそんなことを感じました。話を戻すと、死というものは受け入れがたいけど受け入れなきゃいけないものだし、人間がどうこうできるものじゃない、なんてことを感じた深い物語だったと思います。

 

だいぶ脱線しましたが、色んなことを感じたベビーな作品でした。たまにはこんな重い話を読むのもいいかなとも感じましたね。