酒とポテチと僕

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空の中/有川浩 感想

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有川浩さんの空の中を読了しました。自衛隊シリーズ第2弾らしいですが、塩の街が火の玉ストレートな恋愛だったのに対して、空の中は万人受けしそうな面白さでした。この作品でブレイクしたのも頷ける気がします。

最初から最後までとても面白く、ページをめくる手が止まらなかったですね。各キャラクターもいい味を出していますし、大人パートと子供パートが繋がって物語が進んでいくのが面白く、あっという間に読めました。以下ネタバレ有りです。

 

 

○それぞれの視点

キャラクターの数は多くないんですけど、各キャラクターの意見というか考えがちゃんと書かれていて、それぞれの視点で色んなことを感じられる作品でした。この作品については、一言では表せない多面性があると思います。子供パートと大人パートに分けて感想を書いていきたいと思います。

 

○子供パート

子供といっても高校生ですが、こちらのパートは高知の仁淀川から始まります。高知の田舎が舞台ということで、佳江や宮じいの土佐弁が、いい味を出していて、いい意味での田舎っぽさが表現されていたと思います。

そんな子供パートでは瞬が父親を亡くし、代わりに謎の生物フェイクを飼い始めるところから物語が始まって行きます。子供パートでは、大切な人を亡くしたときの向き合い方だったり、間違った道に進んでしまった時にどうするかみたいなのがテーマだったのかなと思いますね。

瞬は父親を亡くした寂しさをフェイクで埋め合わせしてしまい、真帆は八つ当たりのような復讐に身を投じて行きますが、家族を失った悲しみを自分の中でうまく消化するのって難しいよなあって感じましたね。あと、変わっていく瞬に対して、佳江が心配している様が健気で、瞬がいなくなるところは辛さが伝わって来ました。それでも、その辛さを乗り越えて、瞬を迎えにいく決心をする佳江は強いキャラクターだなあと思いました。

 

○大人パート

大人パートは白鯨とのコミュニケーションがメインで進んで行きますが、コミュニケーションの内容が結構小難しくて、理解しづらいところもありました。頭がこんがらがるようなコミュニケーションをずっと続けられる高巳はめちゃくちゃ頭がいいと感じましたね。

白鯨とのコミュニケーションでは、ずっと個であった白鯨が、集団である人間達の社会構造や国家という概念について、理解できないというシーンがよく出てきており、個と集団という哲学っぽい小難しいテーマがあったと思います。

また、白鯨を通した人間の見方も印象的でした。白鯨からすると、人間同士で数を減らし合う行為は理解できないのですが、確かに種として考えると矛盾してるよなあと思います。捕食目的ではなく殺し合いをする人間の、生物という括りの中での特殊性を感じましたね。

大人パートでは、高巳と光稀の恋愛要素がちょいちょいあって、最初あった距離感が縮まっていく感じが良かったです。個人的に光稀は好きなキャラなので、もっとがっつりとした恋愛話を見たかった気もします。

 

○宮じいの存在感

最後に、この作品での重要人物である宮じいについて。重要なシーンで、土佐弁ながら朴訥な感じでズバッと的を射ることを言う宮じいは味があって良かったです。喋り出すと自分の間合いにみんなを引き込む力があって、佳江が立ち直るきっかけを与え、真帆の暴走を止めたのも結局宮じいでしたね。自分の経験から相手に刺さるような深いことが言える宮じいが瞬達の尊敬を集めるのも頷けます。一番最後に収録されている後日談でも描かれていましたが、危険な生物は人間がわざわざ触りにいくから危ないんだっていう事が印象的で心に残ってます。他の生物との共存という本作のテーマとも深く関わる話で、なるほどですねーって感じでした。

 

あまり感想では書かなかったんですが、SFとしてもすごく面白くて、巨大な力を持った生物が現れたらどうなるのかというシンゴジラにも似たテーマ性、面白さを感じましたね。最近有川浩さんばっかり読んでますが、今のところめっちゃ好きです。図書館戦争も読みたいなあ。