酒とポテチと僕

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塩の街 感想

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有川浩さんの塩の街を読みました。人が塩になっていく災害が描かれており、SFなお話なんですけど、最後まで読んでみると、明らかに恋愛小説だったなあと思いますね。人々が塩になっていくという大災害も、ただの舞台装置でしかなくて、人の想いの強さを書くことに心血が注がれた作品でした。愛する人と世界を天秤にかけるというテーマはfateでも描かれたテーマですね。人が誰かを想う力の強さが、火の玉ストレートでバリバリ伝わってくる作品ですごい面白かったですし、気持ち良い作品でした。以下ネタバレ有りです。

 

○世界と大切な人どちらをとるか

あとがきで描かれていたことですが、この作品の着想としては、世界と大切な人を天秤にかけた時どちらをとるかと考えたことが作品の始まりだったようです。読んでいる途中では、塩害という災害を扱ったSFっぽい感じがするのですが、最終的にはそれも舞台装置でしかなかったと思います。SFが一番描きたかったことではなくて、真奈と秋庭の恋愛というか、お互いの想いの強さが一番描きたかったことだと感じました。

SF部分の感想としては、塩害が宇宙人の侵略とするとあっけなく宇宙人倒され過ぎじゃねって思いましたし、そもそも人が塩になっていくって元素自体が変わっていくことで、科学的に理解できなくねとか思ってしまったんですけど、この作品においてはそんなことどうでもいいんですよね。それが描きたいことじゃないので。秋庭は真奈が塩になるのが嫌だから結晶を攻撃しましたし、真奈は本気で秋庭が死んでしまうなら世界などいらないと思っています。世界と大切な人を天秤にかけた時、迷いはするけれど、最終的には力強く大切な人を選んでるとこがいいなあって思いました。人はそれだけ強く人のことを想えるし、その想いが結果的に世界を救ってしまうこともあるんですね。

あと、印象的だったのは、入江の言葉で、愛は世界を救わない、当事者を救うだけっていうのも心に残ってます。愛は世界を救うって24時間テレビのスローガンっぽいですが、確かに愛が救うのは当事者同士でしかないというのはもっともな話ですね。この作品では世界的に大変なことになっていて色んな事情があるんだけど、結局は当事者同士の主観的な感情が強いってことを感じました。

 

○後日談的短編集について

角川文庫版で読んだので、本編は一冊の半分の分量しかなく、残り半分はサイドストーリーでした。一応そこにも触れておこうかなと思います。

ノブオが出てくる話は、正直ノブオいらんわって感じでした。大変な思いをしてせっかく結ばれた2人をしょーもないガキが邪魔してんじゃねーよっていうのが率直な感想でしたね。まあノブオが何かしたところでどうこうなる2人ではないとは分かってしましたが。第三者の視点で真奈と秋庭の絆の強さが描かれた話だったかなあと思います。災害のことをなんも理解していなかったノブオの成長が描かれた話でもありましたが、いきなり出てきた生意気な中学生に対して、共感することはあんまりなかったかなって感じです。

野坂夫妻の話は本編で少し語られた話の掘り下げで、強そうな野坂由美の弱さが見えた話でした。いざとなったら自分の命が大事になるのはすごい人間らしいと思いますね。そして、もし死ぬとしたら大切な人と共に死にたいという感情の過程が語られていて良かったです。

入江の話では、入江の掘り下げをしつつ、素直になれないお嬢様と使用人の恋物語でした。使用人にずっといて貰うために、塩害になろうとし、入江を拉致するという、お嬢様はなんかだいぶ捻くれたキャラクターでしたね。

最後の秋庭親子の話では、無事親子仲が修復され、真奈も暖かく受け入れてもらえて、ほっこりする終わり方でした。意地っ張りで似た者親子でしたが、秋庭さんが父親に向かって、自分も母親も父親を誇りに思っていたと言うシーンが印象的で良かったです。後日談を読んでいる時、ノブオの話でこれは蛇足ではと少し思いましたが、終わり方は綺麗にまとまっていて良かったです。

塩の街は三部作らしいので、次は空の中を読みたいと思います。